黒板には大きく英語の文字が書いてある。
see your body
その前で秀吉先生はかしこまったように直立していた。その姿はまるでこれから月めがけて飛んでいくロケットみたいだった。秀吉先生の顔は奇妙に細く、ときどき目をしかめて俯くたびにその内面がくろぐろとしたトカゲみたいに教室中に散らばった。その日、午後から台風が近づいていて、秀吉先生と理恵と恵を除くすべての・・・もちろん例外も多くいたのだけど、たくましい自分自身を発散する生徒たちと、本質的になよなよした、いじらしく、そして和やかで穏やかで、ときどきとってつけたような悪口を発する、しかしその悪口の巧妙さと陰惨さがときおり生徒の転校を誘うのだが、そんなふうにぎゅっとしあうことによって成り立っている女学生達は、みんないそいそと同じ真っ赤な自転車に乗ってそれぞれの自宅に帰ってしまった。真っ赤な自転車は締結東東京高校の校則だった。髪の毛は黒以外ならなんでもよかった。
三人が残った理由はかんたんです。発令があった8時40分に、三人だけ蜜柑の皮について考えていたのだ。発令警報はオレンジ色のランプだ。蜜柑の皮と見間違えた三人は、なにごともなくぼんやりとしていたせいで、みんなの速やかな帰宅に気づかなかった。
三人の髪の毛の色はゴールドとセピアとグレイだったのだけど、高校はそれ以外にもカラフルだ。あまりにカラフルであるせいで、ときどきみんなが帽子を被っていると思えるほどだ。シルバー。ホワイト。ブルー。ミント。撫子ブラウン。ほんとうになんでもよかったのだけど、黒だけがだめだった。理由はそれがスタンダールの赤と黒を連想させ「日本らしくない」ということだった。校則の第一項に我が高校は日本の鏡であり、すべて日本でなくちゃならない。だから英語の勉強をするときはまず教科書を破るのだ。ということが書いてある。一年生の高校生達ははじめ戸惑うのだけど、すぐに破るのに慣れる。
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その前で秀吉先生はかしこまったように直立していた。その姿はまるでこれから月めがけて飛んでいくロケットみたいだった。秀吉先生の顔は奇妙に細く、ときどき目をしかめて俯くたびにその内面がくろぐろとしたトカゲみたいに教室中に散らばった。その日、午後から台風が近づいていて、秀吉先生と理恵と恵を除くすべての・・・もちろん例外も多くいたのだけど、たくましい自分自身を発散する生徒たちと、本質的になよなよした、いじらしく、そして和やかで穏やかで、ときどきとってつけたような悪口を発する、しかしその悪口の巧妙さと陰惨さがときおり生徒の転校を誘うのだが、そんなふうにぎゅっとしあうことによって成り立っている女学生達は、みんないそいそと同じ真っ赤な自転車に乗ってそれぞれの自宅に帰ってしまった。真っ赤な自転車は締結東東京高校の校則だった。髪の毛は黒以外ならなんでもよかった。
三人が残った理由はかんたんです。発令があった8時40分に、三人だけ蜜柑の皮について考えていたのだ。発令警報はオレンジ色のランプだ。蜜柑の皮と見間違えた三人は、なにごともなくぼんやりとしていたせいで、みんなの速やかな帰宅に気づかなかった。
三人の髪の毛の色はゴールドとセピアとグレイだったのだけど、高校はそれ以外にもカラフルだ。あまりにカラフルであるせいで、ときどきみんなが帽子を被っていると思えるほどだ。シルバー。ホワイト。ブルー。ミント。撫子ブラウン。ほんとうになんでもよかったのだけど、黒だけがだめだった。理由はそれがスタンダールの赤と黒を連想させ「日本らしくない」ということだった。校則の第一項に我が高校は日本の鏡であり、すべて日本でなくちゃならない。だから英語の勉強をするときはまず教科書を破るのだ。ということが書いてある。一年生の高校生達ははじめ戸惑うのだけど、すぐに破るのに慣れる。
