『――煌。』



その背中に向かって、小さく呼び掛ける。



数秒待っても返事はない。聞こえない、なんてあり得ないからそのまま問い掛ける。



『煌は、怪我してない?』



昨日、帰ってきたって言ってたから。昨日の夜こういう言い争いみたいな物があればキングも怪我してないかなと心配になってしまって。




怪我しても絶対に言いそうにないから。……やっぱり、返事がない。それが肯定なのかと思って不安になる。





『……いつから?』

「………。」

『いつから、こういうことあってたの?』

何年前から、こうしておばちゃんがいなくなった後一人で片付けをしてたの?



何回、怪我しても平気なふりして過ごしてたの?


……私は何回、気付けなかったんだろう。




『ねぇ、何で黙ってたの?』

「………。」

どうして答えてくれないの。




『ねぇ、』


す、と肩へと伸ばした手は、一瞬。触れたと認識した瞬間にキングの体が動いて。まるで拒絶するように離れた。