王様の、言うとおり




何かを差し出されて、反射的に受け取る。




受け取ったものを見れば、ぶどうの画像がプリントされていて。

「ちょっと食べながら待っててね。」




『あ、……すみません。』




今更受け取った物を返すこともできず、

笑顔のおばちゃんに背を向けてキッチンを出る。



ソファーに座る……のも少し、抵抗があって。ソファーを背もたれにするように座る。


蓋を全部剥がしてしまわないように開ければ、ふんわりとぶどうの香りが香って食欲が湧く。



『いただき、ます。』




「どうぞー。」

今日は機嫌が良いのかな。

それとも“私”だからかな。

おばちゃんの楽しそうな声を聞きながらスプーンで一口。



ぶどうを避けるように透明の部分だけを掬って食べれば甘くて。自然と顔が緩んでしまう。


『美味しいです……!』