顔を上げれない私に、春日さん、と呼ばれる。
「……戻ろうか。」
『あ……はい。』
ザッ、とアスファルトの上を踵を返して先を歩いていく、その背中について行きます。
……初めての経験で、初めて分かったことがあります。
告白する方も断られると辛いけれど、断る方も、辛いと言うこと。
相手の気持ちを考えると、何て言って断れば良いか分からなくて。
少し考えても、付き合うか?と言われたらNOだし、
きっと今言わなきゃ後からは言えないと思いました。
それに、ダメなら早めに断るべきだと。
ずっと、待たせてしまうのは悪いよね。
無駄に時間を掛けても悪いから……。
「じゃあ、」
『はい。……おやすみなさい。』
「おやすみ。」
――――旅館の入口で分かれた私達。



