世界


俺は親父の部屋の押し入れを探索するのが趣味で

昔の写真とか
昔の日記とか
昔のエロ本とか
わんさか出てくる

先週の日曜日
この日も暇潰しに
押し入れを探っていた

すると
糸の張った
茶色いものが見えた

「ギターだ!」
俺はすぐに引っ張り出した

ギターなんて生で見たことなくて
ちょっと憧れていた

そのギターは埃が被っていて
今は使っていないようだ

たしかこれはエレキギターっていう種類だった気がする

俺はテレビで見たギタリストの真似をして

左手で弦を抑え
右手で弾いてみた
俺の声より低い音で
体が震えた

すげー!

俺は階段を駆け降りて
畳の部屋にいる親父の前に正座した
「ギターくれ!」

親父は目を真ん丸くして
「押し入れ見たのか!」
と怒鳴った。

「ご、ごめん今日初めて見たしギターしか触ってないから」

と言うと親父はほっとした様子で肩を撫で下ろした

「音楽はおまえぐらいの年齢がとても上達するそうだ。大切に使え」

この日から
俺はギターと生きていくと決めた

親父と一緒に楽器屋に行って
弦を張替えてもらったり
ケースを買ってもらった
親父が昔使っていた楽譜も貰った

今日から俺はギタリスト!
世界一になってやるよ
今のうちにサイン貰っといたほうがいいかもな

って明日学校で言おうかな。