偏愛


影山照樹から手紙が届いた
なんだこれ気持ち悪い

相手は完全に私が自分のことを好きだと思い込んでいる

――冗談じゃない

私が好きなのは綾奈だけ


――――

綾奈に近づく影山が憎かった
綾奈と影山が愛し合ってる姿を想像するだけで吐き気がした

綾奈は私だけの“物”
それゆえに恋愛感情は持っていない

まず私は綾奈の外見に惹かれた
細い目、細い鼻、細い唇

そして彼女の細い身体に性的な感情を抱いた

何度も言うが恋愛感情を抱いている訳ではない
か細くて弱い“物”に惹かれるのだ

つまり綾奈じゃなくても
他の誰でもいい

と、思っていた。

彼女と関わるにつれ
妙な話、執着してしまった

理由は一つ、彼女には
私だけを引き付ける魅力があった

影山には分からない
綾奈の魅力…


―そして絶望

綾奈は影山に惹かれた


どうして?

想いを伝えれば
綾奈は振り向いてくれるの?

そんな簡単な“物”だったの?


私は影山に近づき
綾奈を絶望に追い込んだ


綾奈に「幸せになってほしい」なんて思ったことは一度もない

私の“物”で在りつづける為なら手段を選ばない

綾奈は私を憎んだ
私を傷つけようとしている

私は傷ついていない
こんなに嬉しい事はない

だって綾奈の目には私が映っている!
自分を“物”だと自覚しているに違いない!


ある日そんな私の前に
邪魔な虫がやって来た

しかも2匹

「西田さん、私達はあなたの味方だからね?ね、樹里菜」

「汐里の言う通り、苦しい時はいつでも頼ってね」

――こういう頭の弱い奴きらい

「うん…ありがとう嬉しい」

――綾奈を悪者扱いして


悪者は私であって
綾奈は天使なの!


虫の1匹が私を庇ってた
そして私の変わりに
綾奈の目に映った

私は目に映らなくなった

どうして邪魔をするの

綾奈は私の“物”であるから
私は綾奈の“物”なのに

邪魔しないで!!!




―虫は逃げ出した

ああ、これでまた
綾奈と一緒にいられる。