「どうしたの?お母さんと、なにか…」 「悪い。俺、帰るわ」 聡くんは、まるであたしの言葉を遮るように早口で言うと、クルリと背を向け「じゃあな」と去っていった。 何かあったんだ。 あたしの記憶の中の聡くんは、お母さんが大好きな男の子だった。 その聡くんが、自分のお母さんのことを“あの女”だなんて…。 時々感じていた聡くんへの違和感の原因はもしかして、おばちゃんなの? 「聡くん…」 小さくなっていくどこか寂しげな彼の背中。 何をしたらいいか分からない自分がもどかしかった。