「先生…」 「なんだ?」 「あたしね、好きな人がいるんだ」 静かな車内に、あたしの心音だけが響く気がした。 「へぇ、恵里佳に好きな奴がいたのか。誰だ?俺が知ってる男か?」 また恵里佳って呼んだ。 あたしの名前を軽々しく口にしないで。 あたしのこと、生徒としか思ってないくせに。 未来の妹としか思ってないくせに。 その考えが頭にくる。 いつも平然とした余裕の態度が気に食わない。 あたしの気持ちを知っても、先生は、その余裕な顔を崩せずにいられますか?