「やめて…!はなして…!」

どうして抱き締められているか分からなかった。

「はなして‼」


聡くんに抱きしめられたまま、ジタバタともがいた。


すると、突然、両手で顔を挟まれたと想ったら不意に唇に柔らかなぬくもりを感じた。

なにが起きているか分からない。

ただ、分かっていることは、あたしの唇に聡くんの唇が触れているということだけ。

突然の出来事に何も出来ないままでいると、ゆっくりとぬくもりが消えて、目の前に聡くんの哀しげな瞳が見えた。