何も答えられなくて、黙ってばかりのあたし。 「分かった。じゃあ、もう家に帰った方がいい。家の人、心配するだろう?」 俺が送るよと立ち上がる彼の腕をギュッと掴んだ。 「…ダメーー!!」 「恵里佳?」 「ダメ…帰れない…家には、帰れないよ…」 聡くんの腕を掴んだ手が震えだした。 いま、あの家に帰ることはできない。 だって、きっとお姉ちゃんがいるから…。 妹に裏切られて傷ついてる、お姉ちゃんがいるから。 「ヤダ…帰れない。帰れないよ…」