よく考えてみれば、あたしは聡くんのことを何も知らなかったのかもしれない。 もしかしたら、あたしの記憶の中の幼稚園の頃の聡くんだって、本当の聡くんかどうか分からない。 あの学校で見せている、人懐っこい笑顔も 明るくクラスメートと話している姿も 本当は全部、偽物の聡くんだったのかもしれない…。 あたし、一体、聡くんの何を見ていたんだろう? 聡くんのどこか寂しげな背中が頭から離れなく、ため息ばかりがこぼれ落ちた。