廊下を歩き、下駄箱へ向かう。
靴を履き替え、外に出る。
携帯を取り出し、信也に連絡をする。


「……あ、信也?」

『どうかした?』


「…一緒に行こう」


『…ありがと、んじゃ、この前の店で待ってて』


「分かった」


ほんの少しの会話だけ。
…それだけでも緊張が走る。


「…どんな顔して会おうかな」


「…どんな顔でもいいんじゃないか?」


ふと吐き出した呟きに対しての返事がなぜか返ってきた。


「…先生?」

後ろを振り向くと先生がいた。


「…何、また泣いてんの?何かあったか?」


…泣いてたんだった。
先生の言葉で思い出された先ほどの事。


「…何も、ありませんよ?」

と、小さく微笑みを浮かべ、前を向いた。


「…そか、でも、あんまり泣くなよ」

そんな言葉と同時に頭に乗せられた手。
先ほど、別れたばかりと言うのに、どうも体は正直に出来ているらしい。


ドキドキと高鳴る胸を押さえ、信也と待ち合わせをした店に急いだ。