「…和也?」
そろりと図書室に足を踏み入れる。
…静かだな…、こういうとこ…苦手かも。
なんてことを思いながら、和也を探す。
「いたっ」
寝てるし…
和也は、窓際の机に座り、本を立てて、机にうつ伏せて寝ていた。
「…和也、待たせてごめんね」
と、隣の席へ座る。
「…ふっ、和也こんなの読んでるし」
"甲子園の行き方~夏の夢~"
なんて本を見ながら寝ている和也を微笑ましく、…悲しく見る。
ごめんね…和也。
でもね、決めたの。
もう、決心したの…
「…和也…、ごめんね…」
寝ている和也の頭を優しく撫でて、小さく呟く。
「―…それって、待たせたことに対して?
それとも…マキの俺に対する気持ちに対して?」
寝ていたはずの和也から聞こえた言葉。
「和也、起きてたの?」
「…マキが座ったくらいから起きてた」
と、頭を上げ、いつもの笑顔でこちらを見る。
いつもの笑顔だけど、どこか寂しげだった。
「…そっか…」


