「俺だって全部は知らないけど、知ってること、話すよ」
「うん…」
お義兄ちゃんの話を聞いて、思い出したことがあった。
小さな小さな記憶だったけど、うっすらと覚えていた。
2歳か3歳のころ、一時期お母さんとは別に暮らしていた時があった。
その時、お父さんには
『いいかい?今日から1年ほど、お母さんはいないからね?』
『なんでー?』
『お母さんはね、お母さんのお母さん、つまりマキのお祖母ちゃんと一緒に住むことになったんだよ?』
『マキは行っちゃダメなのー?』
『マキまで行っちゃうとお父さん、寂しくなっちゃうから、マキはお父さんと一緒。マキのお祖母ちゃんも1人じゃ寂しくなっちゃうから、お母さんと一緒なんだよ?』
『そっか…なら、マキ、お父さんといる!!』
『…いい子だ』
そこで優しく微笑む。
この笑顔が大好きだった。


