ピーンポン


 私は誰かも見ないで、急いでドアを開けた。

 ガチャ


 でもそこに居たのはこのマンションに住むおばさんで、昨日の男ではなかった。

 そのおばさんは回覧板を渡しに来たらしく、少し話をしてすぐに帰っていった。

「いつもならドアに回覧板を置いていくのに・・・」


 何で今日に限って手渡しなのか、少しそのおばさんに苛立ちを感じた。

 私はそのままさっき居たソファーに戻った。


 それから5分ぐらいして、またチャイムが鳴った。だから私はまた玄関に向かっていた。

 でもさっきとは違って、私はゆっくり向かった。

 もちろん男が迎えに来るかもしれない、という期待はある。でも今は、また違う人かもしれない、という不安もある。


 だからその二つの感情を背負って玄関に向かっていた。

 ゆっくりと・・・。


 ガチャ

「・・・」

『迎えにきた』

 そこに居たのは昨日の男だった・・・。