秘書からの痛い視線を受けながらも、なんとか応接室に連れていき、2人きりにしてもらった。


女性は幾分落ち着いたのか、すすり泣くような声を上げている。


私はお茶ではなく、甘いココアを入れ、茶菓子も添えてテーブルに置く。


「落ち着いたかな」


「…………ありがとうございます。申し訳ありません、見ず知らずの方にこのような………」


「いいえ、お気になさらず」


どうぞ、とココアを勧めると、女性は頭を下げてからつつしまやかに飲んだ。

稀にみる、仕草に品のある女性だと思った。



「あぁ、おいしい…………うぅっ」


「だ、大丈夫ですか?」


「ごめんなさい…………久しぶりに、人の温かさに触れられたので……」


そう言って、白いハンカチで目元を押さえる。


私はその言葉に、胸がチクリとした。