しかし、私は忘れていた。




顔を上げた蓮を見れば、見とれてしまうくらい輝かしい笑顔だった。


「いえ、真央さんに殴られるなら本望ですから気にしないでください」


「………」



私は忘れていた。


奴は変態だということを。




なんだか、とてつもなく複雑な気持ちになった。





でも、その蓮の笑顔に不覚にもときめいてしまったのは、内緒。





そんな会話をしている間にも、どんどん商品が揃えられていく。



――あと21秒。






蓮は私の手を握ったままだ。





未だ長蛇の列ができているから、私としては早く次の注文をとりたいんだけど………。





「ちょっと、離してよ」


小声で蓮に伝えると、蓮は更にニッコリ笑った。


「嫌です」


「えっ、ちょ、ほんと離s「もう休憩ですよね?」




げ。なんで知ってんの。

青ざめる私を見つめ、更に笑みを深くする。

私の横では、商品を揃え終わり、紙袋を渡そうとしている店員が困った顔で私を見ている。



蓮はその子に微笑みを向け、



「真央さんも追加でテイクアウトします」



そう言って紙袋を受け取り、私の手首を握った。

カウンター越しだから、そのまま連れてかれるなんてことはない。





と、信じてた。



「うわっ」



あいにく、一番端のレジを担当していたため、横のウエスタンドアから強制連行。マジかよ!


「て、店長ぉぉ!」



叫んだ声はお昼の騒がしさに埋もれ、届かない。






「僕とお昼、食べましょうね」

落ち込む私と反対に楽しそうに笑う蓮。なにこの可愛さ。反則でしょ。
あまり見ない無邪気な笑顔に、なんとなく胸がほっこりして


まあいいか、なんて。


わざとらしく溜め息をつき、蓮の手を握った。


「な…」


「蓮、顔赤いよ」


「………このままデートしてもいいですよね」

「ええ!私、服……」


「大丈夫です。僕がプレゼントしますから」


「ていうかまだバイト「嫌ですか?(ニッコリ)」


「………滅相もございません」




●2分12秒●


(たった2分で口説きました)
(いやいや脅しの間違いでしょ!)