「えっ、うそ、僕……あれ?」
「え、待って。
わざとじゃないの?」
「違うよ、ってこれも?
あれ?なんで?」
珍しくうろたえる蓮はなんだか新鮮で、びっくりしつつもちょっと嬉しいなんて思ったり。
「何?なんで?おかしいな、どうしよ」
蓮は少し眉を下げて、意味もなくネクタイや袖元をいじったり、あたふたしたりと落ち着かない。
いつもは白い頬も、ほんのり桜色に染まっていて。
超、可愛い。
「ふふふ」
「ニ、ニヤニヤしないでよ」
「ふふふふふ」
「…っ…もう」
耳まで赤くなってしまった蓮は、プイッと顔をそらして立ち去ろうとする。
「ちょ、どこ行くの?」
慌ててスーツの袖を引っ張ると、こちらを見ずに
「部屋にこもる」
と小さく答える。
ちょっと呂律が回ってない感じも可愛い。
「なんでなんで?いいじゃん、リビングでゆっくりすれば。
見たい映画あるって言ってなかった?」
「あるけど、でも、
こんな自分……やだ」
やだ!?
やだって言ったよこの子!
自分の可愛さ分かってないよ!
どうしてもニヤニヤしてしまう口元を隠しもせず、今度は蓮の二の腕を抱き寄せる。
「いやいや、大丈夫だって。久々にゆっくりできるんでしょ?一緒に見ようよ」
「………一緒に?」
ちら、と視線が投げられ、笑顔でコクコクと頷いてみせる。
「…じゃあ、見る」
まだ不機嫌そうにしながらも、照れたように視線を外す。
か、可愛いいいい!
「さ、見よ見よ!」
「わ、」
もうキュンキュンが止まらない私は、蓮の手を取ってリビングへと走った。