「で、どうする、雰囲気。」

「どうすっかね。やっぱ、シャウト?」

「聖なる夜に?」

「新しいな。クリスマスにシャウト。」

「なんか、切ない叫びになりそうだな。」

「カップル消えろや、みたいな感じで?」

「まぁ、そう主張したいなら、そうやってシャウトすれば?」

「俺、どんだけ切ない男なんだよ。」

「いいじゃん、世の中の切ない男を代表して歌ってやれよ。」

「やだよ。絶対女子にひかれる。」

「お前、結局モテたいだけじゃねぇか。」

「だから、否定はできねぇって。」

よっさんが、深い深い溜め息をつく。

呆れたって目が言ってる。

「もう、らちが明かねぇな。まず、気持ち整理しよう。モテたいなら、モテたいって歌詞を書け。」

「モテたい、あぁモテたい、世界中の女子に好きと言われたい。」

「よし、メモってやる。」

「ちょ、待って。流石に冗談でしょ。」

「俺は一度も冗談を言えなんて言ってないぞ。」

冷めた顔で青いメモ帳に何かを書き込んでゆく。

「いやいやいや、ごめんなさい。モテたいけども、別にそれを伝えたいとは思ってません。調子のりました、すみません。」

さらに冷ややかな目でこちらを睨んでくるよっさん。

「そんな目で見られても、気持ちの整理ってどうやるのってか、整理するだけの気持ちを持ち合わせているかどうか危ういというか。」

俺はよっさんから目をそらせて、言葉を澱ませる。

いきなり、真面目に気持ちの整理とか言われても、ね。

高校生の台詞じゃないよ。

「じゃぁ、コピーバンドになるか。」

「え?」

「だって、伝えたいモノがないんだったら、わざわざ作る必要ないだろ。」

「え?」

俺は、いつにもまして真面目な顔したよっさんに動揺が隠せなくて、言葉に詰まる。

さっきまで、冗談言い合ってたのに。

これはマジな目だ。

急に冷えかえった空気に息苦しくなる。

え、え、何が起きたわけ。