「よっさん。」

「あ、例の吉田くん?」

「そうそう、噂の吉田くん。」

「なんだ、噂って。」

「今さっき、吉田くんの話してたんだよ。誠也より全然カッコいいなって。」

「ってか、よっさん、ねぇ、今頃気づいたのかって何。元から俺が変みたいな雰囲気醸し出すの止めてくんない。」

「誠也より、俺がカッコいいって?まあ、否定は出来ないかな。」

「なあ、シカトしないで。」

「誠也が吉田くんのこと、性格悪いってさ。」

「おい、日野、何言ってんだ。」

「へぇ、誠也。俺、性格悪いんだ。そうだよな。じゃあ、悪いから、部費は全部ギターのメンテナンスに使っても仕方ないよな。」

「さーせん、吉田様。どうか、半額ベースのメンテに宛てて下さい。ってか、俺一人でキーボード持ってきたんだから、それでチャラだろ。」

「一人じゃねぇだろ。俺が手伝ってやっただろうが。」

「あ、日野くんだっけ。日野くんが手伝ってくれたの?わざわざ悪いな。」

「いや、どうせ暇だったし。」

「おい、お前ら、俺に対する態度とえれぇ違いじゃねぇか。」

「もしかして、今から6組で部活する感じ?」

「ねぇ、シカトはホントやめて。」

「ああ、これから、部活。」

そろそろ、俺泣いちゃうよ。

ねぇ、泣いちゃうよ。

俺はしゃがみこんで、いじけたフリ。

「じゃあ、俺帰るわ。邪魔しちゃ悪ぃし。」

日野が自分の席から鞄を取りながら言う。

見た感じ、なんも入ってなさそうだ。

俺の鞄に似てる。

「んじゃ。」

日野が教室から出て行く。

日野はなかなか、気の利くやつだ。