私は学校へ行く荷物をまとめると足早に家を発った。登校する際にはヘッドフォンを忘れずにつけてゆく。意味なんてものはないが、ただ音楽を愛しているからである。私は何が有名だからとか何が売れているという肩書きは、全く気にせず音楽を聴く。直感的に好きだと思えるものしか買うことはない。これこそが自分にとっての美であり表現できることの一つだと信じている。何事にも他人に流されないよう心がけており、よく変わっているねと言われることもしばしばだ。それが私にとっては快感でもあったし、優越感にも浸れる瞬間でもある。
だからといって学校内でははぶかれているわけでもなければ、気を使ってまで友達面をして付き合っているわけでもない。むしろ私は頼られる存在でもあり行動を起こさなくても不思議と人は寄ってきた。そんな人望の厚い存在であったためか、学校で格別に美人だと言われている彼女もいて、何一つ不自由のない生活を送っている。そんな生活を純粋に楽しんでもいた。

あの夢を毎日見るようになってからだ。学校へ行くと必ず背後から視線を感じるようになった。冷たさの中にも暖かさのある視線。まるでそれは冬から春に変わり始める風のようで、どこか私を見守るような感覚。しかし振り返っても誰の姿もそこにはなかった。
私は毎日同じ夢を見る。うなされて、もがいて、目覚める。私は何かが変わり始めることを頭のどこかで悟っていたのかもしれない