4、5分か歩き始めたところで、何故か私の視覚が麻痺していることに気付いた。脳の伝達がどうも遅れはじめている。
その原因は先程から分かっていた。あぁ分かっているさ。同じ形の家ばかりが目に入ってきているからだ。右も左も後ろも前方も曲がり角もミラーに映る景色までも同じ家。
ニュータウンのため、同じ家ばかりを建てたのか?しかしこれではまるで迷路状態ではないか。私は指を回されたトンボのように、目を回して倒れそうになる。一体どうゆうことだ。私は何かに操られているような、そんな感覚に陥った。


この寒中の季節、額には2滴の汗が滴り落ちていった。









ふと左手の家の表札を見た。

それは何気ない行動だった。音がすれば、その方向を見る。そんな当たり前で自然のことだった。





表札にはこう書かれている





「サオリ」







でも、事は異常なんだ