大学前の駅に着いたらみんな立ち止っていた。嵐と表現してもよいぐらいに雨が轟音を響かせていた。

 俺はいつも雨が付き物だ。新しい服を着たり、家族旅行に出かける日とか、そう、母親から聞いたのだが、生まれた日も日本列島は史上空前の台風上陸に見舞われたんだとか・・・。

 だから俺はなれっこだ。

 ふと隣を見ると、雨空を恨むかのような表情で天を仰いでる女性が一人で立っていた。

 腕時計と雨空を何度も繰り返し顔が往復しているが、その手には傘がない。

 その艶かしい表情におれは少しドキドキしていた。

 かわいい。

 そう思ったら俺は何とかこの子を助けてあげたくなったのだ。でも今までしゃべったことある女性と言えば母親と、あだなが「たぬき」である社会の先生だけである。

 でも、俺は決めていたから。大学デビューを。