もう歩きなれた廊下を歩いていた時に声をかけられた。
なぜか懐かしく感じる、その声に。


「…奈緒?」


こっちの学校に来て1か月。

今私はまったく状況がつかめていない

だって
なんで?
どうして?

聖夜がここにいるの?

聖夜は私の唯一の幼馴染み。

そして私の


初恋の人。


私は聖夜が好きで
きっと聖夜も私が好きで。
だから一緒にいるのは当たり前と思ってた。

そして私は転校を父に告げられても聖夜には言わなかった。
態度が変わるのが嫌で。

バイバイしたくなくて。

だから前日に電話で伝えた。

引っ越したくないけど行かなきゃならないの。
大好きだったよ。
私のこと忘れないで

私はもちろん

忘れない
ずっと好きでいる

そんな答えを期待してた。
けれど期待とは違って聖夜の答えは
無かった。

ただ、泣きながら答えを待ってた私の耳に残ったのはツーツーという虚しい機械音だけだったのだ。

翌日私は聖夜が来るかもしれないと言って1時間出発を遅らせたけど聖夜が来ることはなかった。


それ以来連絡を一切取っていない。

「せいっ…」

聖夜、と言おうとしたのだが最後までいうことはできなかった。

目の前は真っ暗。
…?

ドクン

ドクン  

心地よい鼓動が聞こえる。

聞こえる鼓動
真っ暗な視界。

「あん時は悪かったな」

上から聞こえる聖夜の声。


今、抱きしめられてるの?私・・