2月になった頃。
変わった出来事があった。

その日、アタシは
尚人の部屋に居た。


尚人の部屋に居ると言うことは、
寝室には尚人の客が
居ると言うこと。

しかも今日の相手は
真美さん。
真美さんは、いつも2時間だって
決めてる尚人にいつもの2倍の金を払い、
4時間家に居る。


最近知ったことだけど、
真美さんには40歳になる
旦那さんが居るそうで…


尚人とは不倫の関係になるのかな?

なんて、少し不安になったりしたけど
尚人と真美さんは
別に付き合ってるわけじゃないし…ね。


ただのセックス相手だもん。
買春相手が真美さんなだけ。
不倫なんかじゃないよ。…って、
自分に言い聞かせる自分が居た。


「ねぇ?奈央ちゃん、まだここに居るんだ?
いつまで居るの?」

嫌味っぽく、そう言う真美さんが
すごくウザく思えた。

いちいち、そんなこと
言わなくたっていいじゃん…

真美さんの存在自体が
アタシのことを
腹立たせる。

それと同時に、尚人が
何らかの言葉でアタシを傷つけないように
上手く丸めてくれることを
アタシは信じた。

自己中心的な考えかもしれないけど、
でも、アタシ…
傷つくのがすごく怖かったんだ。


「アイツ、妹じゃ無いんすよね。
本当は、俺の彼女なんすよ。
んで…、今同棲してるからここに
住んでるんすよね。嘘ついて、すいません。」


『彼女』って響きに、
アタシは涙が出そうになった。

ハッキリと「付き合おう」って
言われたわけでは無いし、
アタシはまだ、付き合ってる間隔が
無かったのだけど…


でも今、尚人に
アタシが彼女だって
認められたような気がして、
嬉しくて堪らなかった。