「おはよ-諸君!
おっと、憂くんはいるかなあ?」
資料を眺めている最中
扉を乱暴に開き誰が入ってきた
そう甲高い陽気な声が聞こえ
俺は即座に呟く
「ち、…厄介な奴が来た」
俺は呆れたような台詞を
吐くと同時に扉の方に目を向けた
咄嗟に向けた視線が合ってしまったのか
目を輝かせて
こちらへ向かってくる
―聢刃鞠也(しかば まりや)。
「わあ!憂くん久しぶりだねぇ!
元気にしてたかい?」
俺を小鳥遊(たかなし)と
苗字で呼ぶ奴が大半だが
憂(ゆう)と下の名前で
呼ぶや奴はコイツとあと
世間体、いや
ヲタクの聖地…いや2次元…
…きっと俗にいうクーデレ女の
獅子呉くらいだろうか。
「なんの用だよ、鞠也」
「んー
単刀直入に言わせて貰うと
そうだなあ、
君たちへの情報通な僕からの
素敵なプレゼント、とでも言おうかな
良い情報だよ、聞きたいかな?」
かと言って
コイツは勿体ぶる素振りもせず
淡々と元から出来ている台本を
丸読みしているかのような口調
いや、かと言って
それが悪役位置にあたるワケでもなく
コイツの昔から変わらないこの軽い感じは
きっと死刀の過去が絡んでいるのだろう
「ああ、聞かせてくれ」
話を断る気も更々ないが
しかし話を聞いてどうなるとも
何もありはしないからか
俺は気だるそうに
椅子の背もたれに寄りかかり
鞠也にそう言い捨てた
「んーじゃあ
僕の大事な情報を提供するから
ここまで来た出向き料と
提供する情報料で
10万で安くまけといてあげるよ♪」
今までずっと
何も口にせず資料とパソコンに
向かっていた恭哉は
キーボードを打つ手も止めず
微動だにしないその様子に
俺は逆に驚きを隠せなかった
「じゅっ、10万!?」
