「思生ー遅刻するよ。急ぎなさい」

お母さんが心配そうな顔をして私を急がせる。

私が起き上がると隣にいた気がしたぬくもりがない。

なんだかとても心細い感情に襲われる。

また、独りぼっちなってしまうような…

時計を見るともうギリギリの時間。

もううだうだしてる時間もない。

私は支度をすませ、リビングにでる。

『今週のトップニュースは
ヘレン・ケラーだった少女が作詞、作曲した「奇跡の物語」が
CDシングルでNo.1をとったことですね。

今までにないような純粋さがあふれる歌詞が好評とのことです』

テレビから声が聞こえてくる。

最近のテレビニュースは視力聴力を回復した、ヘレン・ケラーだった少女の話でもちきりだ。

友美ちゃんも有名になったなぁ…。

机や棚に手をつきながらやっと玄関までむかう。

あれから私は三ヶ月間リハビリをして、まだちょっとぎこちないけど歩けるようになった。

十年間も動かなかったんだもん。

筋肉が鈍ってて当たり前だ。

「いってきまーす」

ドアを閉めて私は外の空気を胸いっぱいに吸い込んだ。

あぁ…。

私…生きてる…

喜びを全身で感じ、私は少しのびをする。

今日は私の高校デビューの日だ。