「これでよかったの?シイナを助けたって未来は変わらないから、結局アンタ自身は死ぬんだよ?」

時の子は不思議そうに私に聞いた。

「いいんだよ。私のかわりに思生が幸せになってくれれば。もうそれでいい。それだけでいい」

そう、私は満足している。

たとえこのまま私の人生が終わったって、もう悔いはない。

「…ねぇ。アンタは私に夢をもう一度だけ見せてくれたから、私もアンタにいいことしてあげる。
本当はアンタの存在は消える予定なんだけどね…」

時の子は真っ暗な暗闇の中に一つだけの光を作った。

「のぞいてみて」

光の中心を指差す時の子。

覗き込むとその光は窓のようで向こう側、現世の景色が見える。

そこに私がいる。

思生が起き上がって笑っている。

お母さんたちが泣いて喜んでいる。

加奈さんも白衣の先生も驚いている。

誰もが思生が目覚めたことに喜んでいる。

みんなの喜びの絶頂の中、私が苦しそうにうめき声をあげて倒れる。

そうか。これは私の死ぬ瞬間なんだ。

「私さ、アンタの人生がどうなるか少し興味あるんだよね。だからアンタには私が力を貸してあげる」