…急がなくちゃ。

急がなくちゃいけない。

私は過去の自分のうえに飛び乗り体を揺すろうとした。

しかし何度やっても体に触れることができない。

急がなきゃいけないのに…っ!

やけになって過去の自分の体の中を通り抜ける腕を振り回し続けた。

なにも起こらない。

そんな私を見て時の子はクスクスと笑みをこぼした。

私は怒り狂って時の子に掴み掛かった。

「どうやったら体に触れることができるの!?」

私の必死さがツボに入ったのか笑いが止まらない時の子。

やっと落ち着いたかと思うと、哀れなものを見下すかのような目で彼女はこう言った。

「過去のアンタに触れることなんてできるわけないじゃん。内側から起こせば?」

…内側から?

そうか。私はなんで気が付かなかったんだろう?

今まで何度もやってきたじゃないか。

私は過去の自分の中に入り込んだ。

でもどこかおかしい。

過去の私の部屋は思生の部屋と違って何もない。

においも音も物も色も、なにもない。

カラッポだ。

ただ真ん中に『私』がいるだけ。

感情のない顔でどこか遠くを見つめている。

生きている人間には見えない。

魂のない人形のようだ。