目が覚めた。

またあの夢だ…

目の無い私によく似た女の子。

よく知っているはずなのに思い出せない。

私は体を起こした。

ここはもう見慣れた風景。

白くて、薬の匂いやアルコールの匂いがする。

「空菜さんお加減はいかがですか?」

もう聞き慣れた声。

覚えたくもなかった相手の名前。

「はい。加奈さん」

当たり前のように笑顔を振りまく看護師の加奈さん。

きっと、今日でお別れになるかもしれないのに笑顔で話し掛けるなんて今の私には嫌味でしかない。

生れ付きの心臓病で、私が15歳の時に発作を起こして倒れてからはずっとこの病院の中。

高校に入学したばかりの頃だったから、友達もあまりいなくてお見舞いに来てくれる人もほとんどいなくて。

親なんてずっと私の入院費を稼いでいるからお見舞いにも来れない。

だから私はいつも一人ぼっち。

今日は私の誕生日。

本当は少し期待していた。

娘の誕生日くらい来てくれるだろうと
目を覚ましたら隣で手を握っていてくれることを

「空菜ちゃん。お誕生日おめでとう!」