(落ち着け、わたし)

言い聞かせるほどに
呼吸数は増していく。

(イヤ、いやだ、とまって!)

ほとんど過呼吸になりかけたころに
私は、両手首を誰かにつかまれた。

「―っ!!いやっ!はなして!」

私が叫ぶのも気にせず
“誰か”は、私の顔を
のぞきこんでくる。

「いやっ!やめてっ!!」

「…僕の目をみて?」

その声は
駅で意識を失う直前に
聞いたそれと同じものだった。

穏やかで
やさしい声。

その声に
なぜだか心が落ち着いた。

言われた通りに
顔を向けると
私は、衝撃を受けた。