ヘタレ彼氏はイイ男

爪と指の間にも土が入り、本当に汚い手だけど、それだけ一生懸命練習したってことだもんね。



この人、めっちゃカッコいいじゃん!



練習用のユニフォームも顔も土まみれ、でもニカッて笑った顔は、誰よりも輝いて見えた。



きっとあの瞬間、あたしは一飛に惚れたんだ。


恋をしたんだ。




「俺さ、小学校の時から野球やってんだけど、中々上手くならないんだよね」



その後は一緒にグラウンドの片付けと整備をして、帰ることになった。


と言うか、送ってくれることになった。




「まぁ、理由は分かってるんだけどさ」


「え、何なの?」


「練習がいい加減だったんだ。ちょっと練習すれば上手くなると思ってたら全然でさ」


「あ、あたしも一緒だ」


「え?」


「あたしは吹部に入ってるんだけど、簡単に吹けるもんだと思ってたらそんなこと全くなくて・・・それに、楽譜通りに吹くのも大変なの。吹きながら強弱を考えてアーティキュレーションを考えてってしなきゃいけないから、頭結構使うんだよ」


「へぇ・・・吹部も大変なんだなぁ。俺も全然上手くいかないから、監督のせいにしたりとかしちゃってさ」