「今から東京に行くの? 」
「ええ、今から行ってきます。その前におじさんに、お礼を言っておこうと思って」

「お礼なんていいよ」
正和は、顔の汗をタオルで拭いながら照れたように言う。

「おじさん、ありがとうございました。おじさんのおかげで、何とかダンスを続けられそうです」
栞は、かしこまったような言い方をする。

「いや・・・・・・自分は大したことしていないよ。それより頑張ってね」
今日の栞は、どこか大人びている気がする。そのことに、正和は戸惑っていた。

「じゃ、いってきます」
栞は深く礼をした。

「気をつけて行くんだよ」

「はい」
歯切れよく返事をした栞が、正和に背中を向けた。
三歩ほど歩くと、急に栞が振り返る。