「また、そのことは今度話すよ」
と、言って正和は、小野寺の背中に回り両脇に自分の両手を入れて抱えようとするが、だらんとした体は思った以上に重かった。とてもひとりでは抱えあげられなかった。

竹中と浜田が手伝いにきた。
二人は、小野寺の両横に立ち腕をもって、「せいの!」の声掛けで小野寺を立たせた。

「この人は ? 」
真紀子が、見慣れない顔の小野寺のことを聞いた。

「敦子さんの元彼よ」
小田が答えた。

「ニューヨークから来たお坊ちゃまさ」
竹中が継足すように言って浜田と一緒に、小野寺を外へ連れ出してゆく。

「彼女の元彼なの!?」
真紀子が、目を丸くして小田に聞き返した。

「それじゃ、またな。おばさん、ありがとう」
正和が、真紀子と小田、静香に挨拶をして、店を出ようとした。

「ねえ、ちょっと待って! 」
真紀子が正和を引き留めた。