午前十時―
彼は、部屋の前に置いてあった、少女がつくってくれた甚平を大きい黒のスーツケースに入れて、玄関へ向かった。

まだ、昼前で甚平を着て外へでるのはおかしい、と思いスキニーのGパンに、黒のロンTといった ごく普通の服装だった。

けれど、彼が着るとまるで、ハリウッドスターのように輝かしく見えた。

一方、少女はリボンがついた白いワンピースに、薄茶色のブーツで髪はコテで綺麗にセットした。バッグは肩掛け用で小さく、財布とくしと鏡とハンカチしか入っていなかった。

「お待たせー!」

少女は、十階から急いで階段を駆け下りて、玄関の前へと行った。