午後 九時― 彼は、‘ザーゼル’の九階の社長室に居た。 椅子に背中を持たれて、窓に目を向け、外で降り注ぐ雨を眺めていた。 「……今日は、誰にするかな…。」 そう呟き、顎の下に手をおいた。 会社員ばかりを食らっていては、時期に会社に入社希望者がいなくなるだろう… そう考えながら、今晩はどの人間を食べようかと苦悩していた。 カタッ― 椅子から立ち上がると、ハンガーに掛けてあった上着を羽織り、重たい足取りで社長室を出た。