「8時前だよー。」
と、目の前にあった時計を見ながら私が答えれば、さんきゅっ。と言いながらお弁当を包むお兄ちゃん。
自分では、あまりわからないけれど、兄弟の中では仲が良い方らしい。
………自分では思わないけれど。
「あれ、槙はもう行った?」
スーツを着て、髪の毛をセットし終えたらしいお父さんが、ちらりとリビングに顔を出す。
私にはお兄ちゃん以外にも兄弟がいる。
槙は……弟だ。
小学校4年生。
見ためは兄弟の誰とも似ていない。
……………それもそうなはず。
そのうちにわかってくることだけれど、槙だけは本当に似ていないのだ。
「槙は多分もう行ったよー」
お父さんにそう答え、私は食べ終わってごちそうさまをして立ち上がった。

