静かに唇を放した後、

「…逃げないの?」

そう、ハルに聞かれる。

「このままの勢いだと襲っちゃうよ?」

ハルの表情は、真っ直ぐで本気―。


翔との思い出がいっぱい詰まった部屋で、
私は今、
翔じゃないヒト -悠斗- に堕ちようとしてる・・・。
翔を裏切ろうとしている……。

「ご、ごめん。」

僅かな隙間から、私の理性が働きだし、私はハルから自分の体を離した。

「…ダメ?
 俺じゃ…ダメ?」

静かな部屋に、ハルの言葉が響いた。

「ねぇ、こっち向いてよ?」

その言葉に促されるように、俯いていた頭を上げ、私はそっとハルの方へと視線を向けた。

ハルの表情は
さっきと違って
とても穏やかで、
優しくって、、、

「ねぇ? …触れていい?」

その表情に
私は心を許してしまう……