帽子の隙間から見えるカレの顔は、少しでも整った顔っていうのがよく分かって、ドキッとした―。


「じゃぁ、私はこれで……」


ドキッとした私は、緊張を隠すかのように、慌てて自分の部屋に戻ろうとドアノブに手を掛けた。


その時。


「…あぁ!
 お隣さんっ!!」

「は、はぃ?」

「今日の晩御飯、何?」

「えっ?」

「オレ、今超腹減って死にそうなんだよね?」


そう言われて。

この日、初めて会ったのに。

お隣さんの翔と、ウチで一緒に晩御飯のハンバーグ食べたんだっけ?




「うめーっ!」

「そ、そうですか?」

「うん!
 あ。
 その敬語やめないッ?」

「え、、えっ?」

「相沢さんは、何の仕事してんのー?」

「フ、フツーの会社員です。
 久保田さんは?」

「あ、オレ?
 うーん、、、」

「???」

「いちお、芸能人。 …かななぁ〜?」

「え?」

「プッ。
 やっぱ知らなかったんだよね? オレの事。
 いちお芸能界で仕事してるんだけど…。
 まぁ、あまり目立った仕事していないし仕方ないかっ」

「ご、ごめんなさぃ!」

「いいよっ。
 でも、今度探してみてよ?
 ドラマとかにちょいちょーいと出てるからさっ!」


そう言って笑った翔の顔は、
とてもキラキラしてて、今でもはっきりと覚えてる。