「ねー!!」


どしゃぶりの雨に
負けない声で

彩夏が
話しかけてきた。


「何?」

「さっき、坂口君と話してたでしょ?」

「うん。」


うん。と
答えつつ、

見てたんだと
少し驚く。


休み時間は、
雨のため
みんな教室に
いた。

けど、
坂口君はいなかった。

「何しゃべってたの?」

「え?何で?」

彩夏が
にやりと笑う。

「いや、裕子が男に話しかけるの珍しいなって思って。何?惚れた?」

「…?!何?!」

「どうなの?」

「いやいやいや…。まだ会って二日目だよ?!
ってか惚れたって…何言ってんの!」

「恋に時間は関係ないよ!」

「…また、もっともらしいこと言ってるけど…。
あいつ、めっちゃ冷たくて怖いよ。
惚れるとかの前に友達かどうかも…。」

「そうなの?そうは見えないけど…。」


見えない?

彩夏の目線の先を
見ると、

友達と話してる
坂口君の姿が
見えた。

暖炉の前で
しゃがんでる。



さっき
見えなかったのは、
そういうわけか。



坂口君…

笑ってる。



さっき
私の前で
あんなに冷たかった
人間が、

すごく
楽しそうに
笑っている。




何なんだ。
あいつめ。




心の中で
呟いてみる。






その日。

雨がやむことは
なかった。