「おはよう。」

「ん…。」


今朝の
坂口君は
いつもより
眠そうだった。

そして
いつもより
早い登校だった。


「坂口!!いい加減目を覚ましなよね!!」


小林さんが
坂口君の隣で
笑いながら
坂口君の体を
ゆすっている。


「うるせぇな…。」

「5分しか早起きさせてないじゃん。」

「…。」

「ちょっと坂口ー。」


…。

確かに。


今思い返せば、
坂口君に話しかける
小林さんの笑顔は

いつだって
キラキラして、
輝いている
気がする。


なんていうか…

純粋に美しい。


もともと
凄く整って
綺麗な顔立ちだけど、

なんか
中から輝いて
見えると言うか…。



朝のその
やりとりの中でも、

坂口君は
1回も笑わなかった。


1時間目が
始まる前に、

昨日借りていた
ノートを
まとめて返した。


「あの…坂口君…。」


うつぶせて
眠っていた
坂口君を
起こす。


「…ん。」


かなり眠そうに
顔をおこす。


「昨日のノート…。ありがとう。すごく助かった。」


窓から
差し込む光が

長いまつげの下の
黒い瞳を
容赦なく
照らしていた。