笑顔は一瞬だけで、
そのあとすぐに


「まぁ、持って帰りたいんだったら、持って帰れば。」



目だけに
まだ微笑を浮かべながら

静かに私に
それだけ言うと、

ゆっくり
背を向けて
どこかに
歩いて行った。



「おい。坂口!!帰るのか??一緒に帰ろうぜ。」



坂口君と仲のいい、
青沼君が
声をかけながら
後を追った。



びっくりした。


もともとあまり
表情が変わらない
せいなのか…。


今見せた笑顔に
本気で見とれた。


ああ。

本気で笑うと
ここまで美しく
笑う事が
出来るんだ。




自分の微笑みの
美しさを
安売りしない。

本気で笑いたい、
そう思うときだけ
本気で笑う。

俺の笑顔が
見たければ

俺を満足
させてみろよ。





そう聞こえて
しまうほど、
完璧な笑顔だった。







ふと、

小林さんの顔が
頭に浮かぶ。


小林さんは
この笑顔を
知っている
のだろうか…?


この笑顔を
自由に引き出せる
術を

手にして
いるのだろうか…?