「おはよー!!」

クラスの子の
元気な声が
飛び交っている。

「裕子、おはよ。」
「おはよ。」

彩夏が
優しく微笑む。

「昨日は変なこと言ってごめんね。」

「何?突然。」

「いや…。なんか裕子があまりにびっくりしてたから。」

「…まぁ、ね。」

「少しは自覚あると思ってて、私も驚いた。」

そう言って
彩夏が苦笑いを
浮かべる。

「自覚ねぇ…。まだそうだって決まってもないけどね。」

「え?!まだ否定するの?!」

「だってー…。」

「もう!絶対好きだって!!」

彩夏がそう
叫んだのと同時に、


ガタンッ


椅子を引く
音がした。


後ろの席の
彩夏から
視線をはずし、

ゆっくりと
前を向く。


そこには
自分の席に
座ろうとしている、

いつもの
大きな背中が
あった。


無意識に
体が前を向く。

「お…おはよ。」

目だけが
こちらを向き、

「ああ。」

と言い、
自分の席に
座った。


何さ。

返事になってないし。


そんな事を
思いながら、

大きい背中を
少しだけ、
にらみつける。



やっぱり、
好きじゃないよ…



頬杖をついて
ため息を
つこうとした
その時、

頬杖をついた
自分の左手が、


ほんの少し、
けれど確かに、

震えていた。