泣き顔にサヨナラのキス

 

ざわざわとした店内で、目の前のその人は、あたしの報告に「うっそ!?」と驚きの声を漏らした。

野上さんが驚くのは無理もない。


野上さんじゃなくても、会社では必要以上に接することもない、あたしと原口係長が付き合っているなんて誰も思わないだろう。


「本当です。嘘でそんなことは言いませんよ」

「……だよね。でも、いつから?」

「はっきりしたのは、花火大会の夜なんですけど」

あの夜の事を思い出すと、今だって嬉しくて顔がにやけてしまう。

好きな人に好きだと言って貰えることで、こんなに幸せな気持ちになるなんて。

手元のルビー色の液体をゆっくりと飲み干すと、あたしは野上さんに笑い掛けた。