勘違いをしてしまう。

原口係長が、あたしのことを意識してくれているんじゃないかって。

だって、そうでしょ?


申請書関係は全て済ませているし、あたしが原口係長に印鑑をもらう案件なんて多くはない。

いつもなら、声も掛けずに外出するのに……


「だ、大丈夫です。少し違和感はありますけど……」

「そっか」そう言って、今度こそ出て行こうとする原口係長の腕を掴んで引き留めた。


「あの、迷惑を掛けたお詫びに、ご飯作りに行ってもいいですか?

原口係長あまり顔色良くないし、伊藤課長が居ない今、原口係長に倒れられたら困ります。

あたし、こう見えて料理には自信があるんですよ」

途中で遮られないように、早口で捲くし立てると、原口係長は目を伏せて小さく笑った。