「泣くなって」 「すみません」 「泣かれるとキスしたくなる」 「…………」 聞き間違いだと想った。 次の瞬間、原口係長は身体を起こすとあたしを抱きしめた。 シャンプーの爽やかな香りに包まれると、今度は軽く顎を持ち上げられる。 そして、キス。 最初は触れるだけの唇が、次第に深くなっていく。 勘違いしてしまいそうなほど、そのキスはあたしの心を満たしていった。