泣き顔にサヨナラのキス

 

「そっか、俺からも注意はするけど。取り敢えず、俺の隣に来る?」

「えっ?」

メガネの奥の瞳が優しく見えて、不覚にもドキッとしてしまった。


『俺の隣に来る?』


低くて独特の響きを持つ声。

原口係長の台詞の余韻が、あたしの胸を熱くする。


もしかして。あたし、ドキドキしてる?


「隣、デスクの中を片付けたら使えるから」

「あ、はい」

「俺は、多分臭くない」

そう言って、原口係長は笑いながら席を立った。