孝太はチラリとあたしを見て、甘えたように「カナ」と言った。 その言葉に反応するように、あたしの心臓がドクンと高鳴る。 いつもだったら、抱き寄せられてキスをして。そのまま甘い時間を過ごすけど。 今夜はそうじゃない。 右手の中のメモがあたしを冷静にしてしまう。 「カナ、どうしたの?怖い顔して」 孝太の顔がゆっくりと近付いてきて、あたしは言葉に詰まってしまった。 「……」 何も言う間もなく唇が重なって、孝太の腕があたしを抱きしめる。 孝太の唇からは、バニラの味がした。