正面を向いたまま「まったく……」と孝太が言った。 「カナはどうして、俺には何も言わないんだよ?」 「ごめん」 「何が、ごめんだよ?」 やっぱり、孝太は怒っているのか、右手を掴む手に力を込めた。 ……自分の気持ちなんて、言えないよ。 いや、どう伝えていいのかわからなかった。 今だって。あたしはわからないんだ。 「それ呑んだら、帰ろう」 そう言って、やっと手を離してくれた。 もう、お酒はいらない。 それより…… 孝太のキスが欲しい。