孝太の顔は直視出来なくて。お互い前を向いたまま。 しばらくそうした後、孝太がチラリとあたしに視線を移した。 「引き継ぎは順調?」 「あ、うん。取りあえずは」 「良かったね」 「うん……」 「明後日までだっけ?こっちは」 「うん……」 「歓送迎会は、日を改めてだってさ」 「そうなんだ」 「何?その歯切れの悪い感じは……」 「だって……孝太、手を離して。恥ずかしいよ」 さっきから、ずっと右手は孝太の掌の中で。 どうしても意識がそこに集中してしまう。